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山川輝男さん |
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「わたしたちは雑誌の切り抜き、年賀状のファイリング、自分史、子どもの作文、卒業論文、絵描き帳など本の形にできるものを工夫して、本に仕上げて楽しんでいます」とこの世の中に1冊しかない本作りに励むのは牛久製本同好会。代表の山川輝男さん(77)は「若いころから本が好きでよく図書館に通っていました。借りる本の傷みが気になり修理できないものかと考えるようになって本作りに関する本を読みましたがどうにも理解できなくて。そんなとき本作りの1日講座があり参加したところ疑問が解消しました」と話す。
本の修理の過程で本作りもしてみたいと牛久市中央図書館に小さなチラシを置き同士を募った山川さん。
会は1990(平成2)年にスタート。試行錯誤で本作りに取り組んだ。「今考えてもそれほど間違った本作りはしていませんでした」。自費出版となると時間と費用がかかるが「手作りでも10冊ぐらいなら可能です。原稿を書き、ワープロ印刷、コピーなどでまとめ、編集して本の形に仕上げるのは楽しいですよ。パソコンで編集もできますので豪華な本ができます」。味のある奥の深い世界を夢見て常日ごろ研さんに励んでいる。
毎年出来上がった本は11月の文化祭に展示する。会員の伊藤徳郎さん(78)は「やり始めて3年。この間に作った本は80冊になります」とめきめき上達したが、難しいのはとじ代という。本作りは毎月第4土曜日の午前中、牛久市の生涯学習センターで行われている。「年間を通して予定をたてていますが、どこからでも参加できます。長続きできる人なら大歓迎です」と参加を促す。会費は材料費を含めて400円程だ。
一方、同会が牛久市中央図書館で本の修理に携わったのは91年。以来、毎週水曜日の午前中、思い思いに会員が図書館に来る。「本の修理は1冊ごとに直し方が異なり、難しいです。始めたころは思うように出来なくてね」と工夫しながら取り組んできた。
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中央図書館の1室で修理作業をする会員 |
「本作りをマスターした人が修理に携わるのがベターですね」。本の仕組みが分かれば修理にもその技術が生きるからだ。
本の一部が切り取られたり、破かれていたり、ひどいときは数ページも切り取られ、利用者のマナーの悪さが感じられる。
利用者が破れたページや抜けたページをセロハンテープで好意的に補修してくれるケースがあるが、後の修理がテープのべたつきで困難になってしまう。月の修理数は40〜50冊になる。うまく修理ができた時は大きな満足感が得られるが、一度修理した本が再び修理に持ち込まれると悲しい気持ちになる。
また、山川さんは最近の書籍の造本に不満がある。「読み始めて間もなくページが抜けたり、背の部分が浮いていたりした本を見掛けます。少しでも浮いていると、ほかの本を調べます。1冊しかない場合は、別の書店に行きます」と徹底している。
山川さんなりにこうなった原因を分析すると、「本は消耗品との思想で作られる、本に対する愛情が欠ける、無線とじが増えた、糸とじでも糸が丈夫で細すぎるため紙が切れる、読者の本の扱いが雑」。こうしたことが本の傷みを促進させているのではとみている。
活動について05年に「エイジレス・ライフ実践団体社会参加章」として内閣府から表彰され本の修理事業の活動内容が紹介された。
◎牛久製本同好会
問い合わせ:TEL 029-873-0622 |
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