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霞ヶ浦で遊ぶ子どもたち |
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小・中学生が中心 霞ヶ浦再生化事業
環境問題はまず地域作り シニアも手助け
「瀕死(ひんし)の湖」といわれた霞ケ浦に、地元の小学校に働きかけて水草のアサザを植えるなど、再生化事業を進めている牛久市のNPO法人アサザ基金。活動の主体は小・中学生の子どもたちだが、下準備や監視役として60〜70代のシニアボランティアも活躍している。代表の飯島博さん(52)は、「お年寄りの経験や知恵を語ることで、子どもたちの未来の可能性の扉が開きます。環境問題を解決するためにはまず地域作りが必須。そのために高齢者の力を貸してほしい」とボランティア参加を呼び掛ける。
アサザ基金は、170を越える地域の小学校などの教育機関や、NEC、三井物産、損保ジャパンなどの企業、行政、市民とネットワークを持ちながら、霞ケ浦再生活動を行っているところに特徴がある。
アサザ基金を始める前は、筑波の研究所で非常勤講師を勤めるかたわら霞ケ浦の水質保全の活動を行っていた飯島さん。しかし、「行政に改善を依頼するばかりの活動に限界を感じ」、1995年に同NPOを立ち上げた。
現在の主な活動は、水草のアサザの植え付け、田んぼ作り、周辺の木々の整備、ビオトープ(生物が生息する空間)作りなどで、年間を通して休むことなく続けられている。これらの活動にはシニアのボランティアも多く参加している。「中には東京からいらっしゃる方もいますよ」と事も無げに飯島さんは話す。
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飯島博さん |
NPO設立当初、飯島さんはまず小学生を引き連れて霞ケ浦の周囲を歩いた。「霞ケ浦を知ることが第一歩」と考えたからだ。そして、観察の結果「アサザ」という植物を見つけた。アサザが群生している場所は波が抑えられ岸に砂がたまり、浅瀬が形成される。それによって、他の植物も育ち、魚や昆虫も生息することが分かった。
「マイナスを減らすよりも、いいものを増やしてくという考えがアサザ基金の根底にあるのです」と逆転の発想を語る飯島さん。さっそくアサザの種を春に発芽させて夏に湖に植生するプロジェクトを立てた。この計画に若い世代が多く参加し、大成功を収める。それを機に飯島さんは湖周辺の学校にアサザプロジェクトの参加を働きかけ、少しずつ余波が広がっていった。協力企業も増加し、今では国土交通省や大手企業もさまざまな規模で湖の再生に尽力するまでに。2000 年には「第1回明日への環境賞」を受賞した。
飯島さんはアサザプロジェクトの成功を買われ、現在、東京や秋田、北九州から環境問題解決のコーディネーターを依頼されているが、どの地域でも、「環境問題を解決するには地域作りから」を信条としている。そして、地域づくり体験を地元の子どもたちに取り組ませている。「子ども時代に地域問題に取り組めば、大人になっても簡単に外へ出ないと思うのです」と期待している。
しかし、子どもたちだけの活動には危険が伴う。「そこで活躍するのが知恵や経験のある高齢者です。昔はどんな生き物がいたか、どんな風景だったかを話したり、子どもたちを見守ってくれるだけでも非常に助かります。高齢者は、子どもたちの未来の可能性を広げる存在なんです。地域の住民だという自覚や、世の中を変えていくだいご味も味わえると思いますよ」と、シニアにボランティア参加を呼び掛けている。
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