|
|
布の持つ力を絵本に 笠間市の絵本作家・熊谷美喜代さん |
|
|
|
布絵本を制作中の熊谷美喜代さん(右)奄ニ笠間市立友部図書館ボランティア「睦読書会&プレイルーム」のスタッフ |
子どもの豊かな感性育む
笠間市の手作り絵本作家・熊谷美喜代さん(73)は、笠間市立友部図書館ボランティアグループ「睦読書会&プレイルーム」のメンバーとともに布絵本を制作している。最初に布で絵を作り、その後子どもからストーリーを募集し、布絵本を完成させている。ことしの布絵本は9月27日から同図書館で開催する「第16回子ども読書フェスティバル」で発表する。「子どもの心を揺さぶり、感動させる絵を布で描きたいと常に思いながら作っています。布の暖かい感触が子どもの感性と言葉を豊かにしてくれればうれしい」と熊谷さんは話す。
布絵本を作る以前から、自宅で私設図書館「子ども文庫」を30年以上開催している熊谷さん。「人は生まれてから言葉に囲まれ生きています。子どもにたくさん言葉を身に付けてほしいという想いが強くありました」。「子ども文庫」を始めて3年後に、子どもたちの文集を作った。「子どもの文章は、生き生きとしていて挿絵も面白いです。彼らからあふれ出てくる感性の豊かさに魅せられ、その時の言葉を1冊の絵本として残してあげたいなあ、と絵本作りを始めました」と振り返る。
当時は紙絵本だったが、23年前からは布絵本作りも始めた。「布絵本は、手からも言葉の世界が広がるので、子どもが言葉を体で覚えていくことができます」と話す。例えば、羊は毛並みのある布地を使って羊毛の柔らかさを、雲は綿で作ってふんわりしたイメージを伝える。こういった工夫で、物や言葉の持つイメージや感触を喚起できるようになる。
布絵本の制作は、まず熊谷さんが原画をおこして彩色し、それに添って布を捜す。細かく決めても手芸店では売っていないこともあるため、大まかなイメージをもとに買いに行く。「以前、『月』を作るために光沢のある神秘的な布を捜しに行ったのですが、出合ったのは綿の光沢のある生地でした。でもクレーターの感じが出せる、と妥協しました。布によって絵の雰囲気が変わり、子どもの感動も違ってきます。布との出合いが楽しみです」。どうしても譲れない時は、布を自作することも。
布絵本では動物を主人公にすることが多い。「カバを主人公にした絵本を制作している時、実際に赤い汗をかいているカバを見るために大阪の動物園まで行ったことがあります。残念ながら休館で、仕方なく東京の上野動物園に行きました」と苦笑する。
16年前から、ボランティアグループの「睦読書会&プレイルーム」のメンバー12人とともに40センチ×50センチの大型布絵本を制作している。「メンバーで意見を出し合って、みんなで作り上げます」。その後、子どもからストーリーを募集して布絵本は完成。布絵本を制作するグループは全国にあるが、布絵を見て子どもが物語を作り、そのストーリーを使って布絵本を完成させているのは、全国でも笠間市立友部図書館だけだ。
今までに制作した布絵本は、約40冊。「にわとりさんさぁどーぞ」「アントン王子のぼうけん」「ゆらーりゆらり」など、歴代の本は同図書館の児童コーナーに常設されており、読み聞かせにも使われている。
3年前、熊谷さんは、小平記念日立教育振興財団より「小平奨励賞」を受賞した。これがきっかけとなり、3年ほど前から今度は「シニア文庫」をスタートさせた。「お茶を飲んだり人と話したりできるお互い励まし合う場を提供したいと思っています。みなさんが楽しんでくださることが私の生きがいです」と笑顔を見せる。
「シニア文庫」で布絵本の指導をすることも。「年を取るとあちこちにガタが来ますが、全てを受け入れ、今まで培ってきたものを生かして、みんなで助け合いながら生きていきたいですね」 |
「布絵お話づくり」のストーリーは22日(金)から9月9日(金)まで幼児から高校生を対象に募集し、9月27日(火)から10月16日(日)まで笠間市立友部図書館で開催される「第16回子ども読書フェスティバル」で発表される。募集期間中は同図書館で布絵を展示する。
「布絵お話づくり」募集や布絵本作りの問い合わせは、笠間市立友部図書館へ。Tel.0296・78・1200 |
|
| |
|