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大間マグロの水揚げ。マグロ漁師の誇らしい瞬間だ |
まるでマサカリのような独特な形をした青森・下北半島は本州最北に位置する。恐山を有する信仰の地である一方、マグロやイカ、ウニなど“おいしい食材”の宝庫でもある。特に半島西北の3町村(大間町・風間浦村・佐井村)には、魅力的な海の幸がそろう。旬の味覚や温泉など北の旅情を求めて、最果ての地を巡った。
最高級、大間のマグロ
マサカリの鋭い切っ先部分に当たる大間町は、本州最北端の地。北海道函館市とは最短地点で17.5キロしか離れておらず、晴れた日には函館の街が一望できる。
「魚喰いの大間んぞく」のまぐろ丼 |
大間の特産といえばマグロ。潮流の激しい津軽海峡でとれた「大間マグロ」は、近海マグロのトップブランドとして高値で取引される。町民の約半分が漁師という同町では、漁期の7月末から1月にかけて町全体が高揚する。マグロの解体ショーを行う「ブルーマリンフェスティバル」(8月14日)や「超マグロ祭」(10月22〜23日)などイベントも豊富だ。 本場のマグロを味わおうと、同町でも珍しい現役マグロ漁師が経営する食堂「魚喰いの大間んぞく(おおまんぞく)」(TEL.0175・37・5633)を訪ねた。人気メニュー「まぐろ丼」(小鉢、みそ汁付き、2800円)は、大間マグロの大トロ、中トロ、赤身の3種類がぜいたくに乗った丼だ。あえて味には言及しないが、一口食べるごとに自然と笑みがこぼれる。 |
竹内 薫さん |
店主の竹内薫さん(60)は、自身で釣り上げたマグロが築地の初セリで2020万円(1キロあたり10万円、2001年)の値をつけた経験を持つ現役漁師だ。「最高の大間マグロを手ごろな値段で食べてもらいたい」と昨年5月、同店をオープンした。
“漁師の娘”が案内
大間の観光ガイドなら“元気な地元のかっちゃ”たちで結成した「おおまエスコートクラブ」(TEL.090・7931・4509、ガイド代1000円〜)がお勧め。マグロ一本釣り漁師の娘で代表・蛯子良子さん(44)らスタッフが観光案内のほか、ここでしか聞けない“マグロ漁師のストーリー”などを面白く披露してくれる。「3月の震災以降、大間も観光客が激減しています。漁師たちも頑張っていますので、ぜひ遊びに来てください」と蛯子さん。
「海峡」の温泉郷
550年前の地図にも記されている下風呂温泉。湯治場として栄えた |
大間町の東隣・風間浦村には、津軽海峡を見渡すように宿が並んだ下風呂(しもふろ)温泉郷がある。作家・井上靖が小説「海峡」を仕上げるために滞在した温泉地としても知られる。白濁した、ちょっと熱めのお湯が疲れた体に心地いい。井上靖も気に入ったと見えて「海峡」で同温泉を旅情たっぷりに描写している。
《…ああ、湯が滲みて来る。本州の北の果ての海っぱたで、(中略)温泉旅館の浴槽に沈んで、俺はいま硫黄の匂いを嗅いでいる。》
風間浦村の代表的な味覚は、イカ。これからの季節は、海峡沖合に無数に広がるイカ釣り漁船のいさり火が幻想的だ。下風呂漁港に隣接する「活イカ備蓄センター」(TEL.0175・36・2112)では、水槽に新鮮な活イカを常時用意、注文に応じてイカ刺しにしてくれる。津軽海峡の潮流に鍛えられたイカは、十分な歯応えとかむほどに口に広がる甘みが特徴だ。
仏ケ浦の奇岩。仏ケ浦へは陸伝いにも行けるが、急な階段の上り下りがあるため、観光船で行くのがお勧め |
仏ケ浦、天然の造形美
佐井村の海岸約2キロにわたって奇岩が連なる景勝地・仏ケ浦(下北半島国定公園)。長い年月をかけて厳しい津軽の荒波に洗われてできた景色は、まさに「天然の造形美」だ。「五百羅漢」や「如来の首」「一ツ仏」などと名付けられた奇岩の数々は極楽浄土を思わせる。
歌人・大町桂月は1922(大正11)年に同地を旅した際、その美しさを《神のわざ鬼の手づくり仏宇陀(仏ケ浦)人の世ならぬ処なりけり》と詠んだという。
仏ケ浦へは佐井港などから観光船(佐井定期観光(株) TEL.0175・38・2255)で。
佐井村での食事は、「ぬいどう食堂」(TEL.0175・38・5865)のうに丼が絶品。近くの海でとれた新鮮なムラサキウニがたっぷり盛られて1500円(売り切れる場合があるので事前連絡を)。
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【アクセス・問い合わせ】
大間町方面へのアクセスは、東北新幹線七戸十和田駅からバス、または北海道函館市からフェリーが便利。
詳しいアクセス方法や観光全般についての問い合わせは青森県東京観光案内所 TEL.03・5276・1788 |
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