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「フランス・ミュージカル」をご存じでしょうか。英米に代表されるミュージカルと異なり、音楽とダンス、歌手とダンサーを分離し競合させるという画期的なスタイルのミュージカルのこと。現代版グランド・オペラやスペクタクル・ミュージカルなどとも称されます。本来のミュージカルは、それぞれのパフォーマーが「歌って踊って演技する」のが基本であり、分業制はいたってまれです。
もともとフランスはバレエやオペラの盛んな国。とりわけ19世紀のパリ・オペラ座は「グランド・オペラ」といわれるスペクタクル性にあふれた大がかりなオペラで有名でした。その伝統が今まさに「ロック・オペラ」という形で復活しているわけですが、その呼び水となったのは、1960年代のロック・ミュージカルでありロイド=ウェバーのロック・オペラでした。
そして79年、最初の本格的なフランス・ミュージカル「スターマニア」が登場。仕掛人はカナダ・ケベック出身のリュック・プラモンドン(作詞)とフレンチ・ポップスのミシェル・ベルジェ(作曲)です。翌年、今やグローバルなフランス・ミュージカルと化した「レ・ミゼラブル」が作られましたが、決定的な転機は98年の「ノートルダム・ド・パリ」。これもプラモンドンの作品で、中世の物語に現代の移民問題を盛り込んだ意欲作です。
フランス・ミュージカルは、虐げられた人々の自由を求める叫びといった反メロドラマ志向の作品が多く、大人が楽しめる上質なエンターテインメント性を併せ持っているのも特徴の一つです。
ニューヨーク、ロンドンに次ぐミュージカル第三の都パリを舞台にした、フランス・ミュージカルの世界を堪能していただけたら、と思います。
《早稲田大学教授 渡辺諒》 |
「ノートルダム・ド・パリ」
27日(水)〜3月17日(日)、東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階、JR渋谷駅直結)で。
フランス・ミュージカルブームの火付け役になった同作。ビクトル・ユゴーが描いた愛の物語をエモーショナルな音楽とアクロバティックな演技でおくる。英語版(字幕付き)。S席1万2000円、A席9000円。上演日・時間など詳細は問い合わせを。
Bunkamuraチケットセンター TEL.03・3477・9999 |
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