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「万国博大パノラマ」 「小学二年生」ふろく 一九七〇年六月(小学館蔵) |
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現代の児童向け雑誌には、バッグや目覚まし時計などの豪華な“ふろく”が登場しています。これは、2001(平成13)年にふろくの規制が緩和され、多様な素材の使用が可能になったからです。それ以前は紙製のふろくが主流でした。紙のふろくの歴史は長く、明治・大正時代に相次いで創刊した幼年雑誌に付いた、組立式の紙のおもちゃやすごろくが起源です。
昭和初期には「大飛行艇ドックス号模型」などの「少年倶楽部」の大型組立ふろくが評判となり、他誌にも複雑な組立ふろくが付くようになります。しかし、戦争の足音とともにふろくにも戦時色が反映され、戦局の悪化に伴う統制によって雑誌のページ数が減り、ふろくは姿を消しました。
終戦を経て、1950年代にはふろくが復活。やがて各誌がふろくの数の多さと豪華さを競うようになります。漫画雑誌は「鉄腕アトム」「鉄人28号」など人気作品のふろく、小学生向けの学年誌には学習の要素を持つふろくなど、ふろくには雑誌の個性が表れました。図版は1970年(昭和45)開催の日本万国博覧会(大阪万博)会場を再現した学年誌の組立ふろくです。万博のシンボルだった太陽の塔と大屋根、各パビリオン、ロープウエーなどもあり、眺めていると楽しい雰囲気が伝わってきます。学年誌はたびたび万博特集を組み、パビリオンの図解なども掲載して読者である子どもたちの期待に応えました。2025(令和7)年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)への関心が高まっていますが、昭和世代にとっては大阪万博が懐かしく思い出されるのではないでしょうか。
このように、ふろくにはその時代の出来事や流行がいち早く採り入れられ、子どもの夢と憧れを映し出しているのです。
《神奈川県立神奈川近代文学館 秋元薫》 |
◆ 「『おまけ』と『ふろく』展 子どもの夢の小宇宙」 ◆
9月24日(日)まで、神奈川県立神奈川近代文学館(みなとみらい線元町・中華街駅徒歩10分)で。
子どもにとって身近でささやかな宝物であるお菓子のおまけと雑誌のふろく。その明治、大正から現代に至る進化を通して、少年少女を取り巻く世相の変遷をたどっている。
観覧料一般500円、65歳以上250円。同館 Tel.045・622・6666 |
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