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ヘラクレスのライオン退治の舞台となったネメアのゼウス神殿(ギリシャ・ペロポネソス半島、筆者撮影) |
ギリシャ神話には幾多の英雄が登場します。その中でも一、二を争うのがヘラクレスでしょう。父は大神ゼウスですが、母はミケーネの王女アルクメネで、彼は不義の子として生まれました。その生い立ちによりゼウスの妻ヘラの憎しみを一身に受け、生涯を数々の難行苦行に費やすことになりますが、逆にそれがヘラクレスの英雄としての名声を高めることにつながったのでした。
ヘラクレスの「十二の難行」の最初を飾る物語「ネメアのライオン退治」により、ヘラクレスはライオンの毛皮とこん棒を付けた姿で、陶器や絵画に描かれています。
実はヘラクレスの冒険譚(たん)の舞台は、ギリシャ本土にとどまらず、クレタ島や黒海周辺、さらにははるか西方の世界の果てまでも広がっています。「十二の難行」の数々、「ゲーリュオンの赤い牛の生け捕り」や「ヘスペリデスの園の黄金のリンゴ」の物語は、現在のモロッコやスペインの辺りが舞台とされ、当時のギリシャ人の海上航路の広がりと軌を一にしています。
また、古代ギリシャの四大競技祭の一つにオリンピア祭と並んで挙げられるネメア祭は、ゼウスをたたえヘラクレスの偉業を記念する祭でした。十二の難行も一部が遺跡として現存しており、神話と現実(歴史)が不可分につながっている様が感じ取れます。
古代ギリシャの黎明(れいめい)期、初期鉄器時代は残された史料が少なく「暗黒時代」とも呼ばれ、神話の霧に包まれています。どこまでが作り話でどこまでが真実の歴史なのか—、そんな推理を楽しめるのもギリシャ神話の魅力です。
《日本女子大学学術研究員 佐藤育子》 |
◆ アストライアの会講演会「ヘラクレスの十二の難行の跡を追う」 ◆
11月18日(土)午後2時、豊島区イケビズ(としま産業振興プラザ、JR池袋駅徒歩7分)第1会議室で。
日本女子大学学術研究員の佐藤育子氏をゲストに招き、現在のギリシャの地名・遺跡に残るヘラクレスの難行の跡を追うとともに、「ヘラクレスに見るギリシャ神話と歴史」を考察する。後半はゲストを交えたお茶会も。
参加費2000円(お茶代込み)。問い合わせはアストライアの会・松原 Tel.049・258・3218 |
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