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人口1万人余りの宮城県女川町出身の中村雅俊さんは、これまで慶応大入学と役者になったことで「地元の人たちを2度びっくりさせた」 |
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「おれの仕事は定年がないので、定年を迎える不安とか覚悟というのは経験したことがない」と話すのは、俳優で歌手の中村雅俊さん(58)。“夫婦”と“定年”がテーマの映画「60歳のラブレター」(5月16日全国公開)に主演している。中村さんが大学時代の同級生を見ていて感じるのは、定年を迎えようとしていてもまだ現役意識が強いことだという。「“第2の人生”はお金や地位ではなく、自分にとって本当の幸せを求めるチャンス」と考える中村さんは、「そういう時こそパートナーである妻の存在感が大きい」と話す。
映画「60歳のラブレター」主演
「60歳というのはもっと先だと思っていたけれど、もうすぐ。まさにおれも“アラ還”(還暦前後)なんです」と中村さん。外交官志望だったが、大学(慶応大学経済学部)に入学して始めた英語劇がきっかけで演劇の道へ。テレビ「われら青春」でデビュー以来、人や作品との良い出会いがあって、テレビドラマや映画に数多く出演する一方、歌手としても活躍中だ。
台本読んで涙が出てきた
そんな中村さんが「60歳のラブレター」で演じるのが、大手建設会社の役員・橘孝平。定年で退職するのを機に熟年離婚する夫婦の夫という役どころだ。
「役者はいい作品との出会いがすべて。そのためにも魅力的な人間でいたい」と考えている中村さん。「台本を読んで自然と涙が出た。夫婦についていろいろ考えさせられた」という今回の作品は「非常にやりがいがあった」と話し、満足げな笑みを浮かべる。
映画は“アラ還”世代の男女による3つの物語で構成されている。孝平夫婦のほかには、愛妻に先立たれて娘と暮らす医師と女性翻訳家のカップル、ビートルズ世代で鮮魚店を営む仲良し夫婦。物語は離婚後、30年前の新婚旅行で妻が書いた手紙を読んで、かけがえのない存在にようやく気づいた孝平が北海道に旅行した妻を追うという展開に…。
「その中で一番難しい役」(中村さん)という孝平を演じてみて感じたことは、「この映画の中だけじゃなく、ごく普通の夫婦でもどれだけお互いのパートナーのことが分かっているんだろうか」ということだった。
「相手のことを勝手に断定して生きている夫婦が多い」と感じている中村さんは、「あるきっかけで、相手は自分のことをこんなふうに思っていたんだと分かったりするのでは」と話す。
例えば、“2007年問題”といわれた熟年離婚。仕事第一でやってきて定年退職を迎えたとたん、妻から離婚を突きつけられる夫。「家族を養うためという大義名分で家庭や妻との関係から逃げていたツケが熟年離婚なのではないでしょうか」と中村さん。価値観が多様化し混沌(こんとん)としている現代。「だからこそ自分らしさを失わずにいたい」という中村さんにとって、「60歳のラブレター」には、「見終わった後で自分たち夫婦はどうなんだろう」と考えさせられるところがあるという。
ラブレターは書いた記憶ない
長年連れ添った夫婦が、口に出しては言えないお互いへの感謝の言葉を1枚のはがきにつづる応募企画「60歳のラブレター」。2000年から毎年募集され約8万通を超えるはがきが寄せられるという住友信託銀行の人気企画が映画のベースになっている。「今までラブレターを書いた記憶はないですね」という中村さん。演技よりもラブレターを書くほうが難しいようだ。
『60歳のラブレター』
監督:深川栄洋
脚本:古沢良太
出演:中村雅俊、原田美枝子、井上順、戸田恵子、イッセー尾形、瀬戸智恵
上映時間:128分
5月16日(土)から丸の内ピカデリー(TEL03-3201-2881)ほかで全国公開。 |
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