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「もともと明るく負けん気が強い性格」と話す愛華さん。「この病気(悪性リンパ腫)との闘いで、もっとつらい思いをしている人たちはたくさんいる。そういう意識は強くあります」 |
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リンパ系組織のがん、悪性リンパ腫を患った女優、愛華(あいか)みれさん(44)が、現在上演中の音楽劇「きらめく星座」に主演している。病名の告知は昨年春。「舞台に立つことは、もうできないかも…」と思ったというが、抗がん剤の副作用に耐え抜き、“奇跡的に早い回復”を遂げた。闘病を支えた男性(35)と、ことしの元日に結婚した愛華さん。「舞台に立てる喜びと、かけがえのない人のいる幸せをかみしめています」と笑顔を見せる。
悪性リンパ腫から復帰…そして結婚、舞台主演
愛華さんが首付け根近くの“ゴルフボール大のしこり”に気付いたのは昨年2月。その翌月、精密検査の結果を聞き、「意外に淡々と『わたし、死ぬのかな』と思った」と振り返る。宝塚歌劇団では「華やかな顔立ちと美しい立ち姿の正統派男役」として花組トップスターを務めた愛華さん。2001年の退団後は、舞台のほか、テレビドラマや映画にも活躍の場を広げた。2年ほど前から、都内でスポーツ治療院を開業する男性と交際し、公私とも充実する中、突然襲ってきた病魔だった。
抗がん剤治療
出演予定の舞台をキャンセルし、抗がん剤を主体とした治療を受けた。
体の痛み、吐き気に加え、つめが黒くなり、髪の毛がすべて抜けるなどの副作用。「気が付いたら『わたし、死にたくないのに』とつぶやきながらベランダに立っていて…。彼が部屋に連れ戻してくれたこともあった」と語る。
「心が折れかかった」というが、舞台の出演依頼が「わたしを前向きな心に戻してくれた」と愛華さん。治療開始から5カ月後の昨年8月、復帰の舞台を踏んだ。「うれしくて…、周りに人がいない時に泣いてしまいました」。とはいえ1カ月近い公演期間中は、放射線治療を受けながらの演技。交際相手らが病院から劇場まで車を運転し、愛華さんは車内で舞台の化粧をしたという。
3度の“結婚辞退”
「健康な女性と未来を築いてほしい」。3度結婚を断ったが、「相手の意思は変わらなかった。普通の恋愛とは全く違う形で、互いのきずなは強くなりました」。目に涙をにじませ、かみしめるように言葉を継ぐ。2人は愛華さんの亡くなった母親の誕生日に当たる1月1日に入籍。愛華さんは上演中の「きらめく星座」にかけて「夫はわたしにとって、きらめく存在です」。持ち前の明るさとユーモア精神を取り戻している。
「主人公と重なる」
復帰後、初の主演作となる「きらめく星座」は、戦時色の濃い浅草のレコード店を舞台にした“怒号や悲鳴、笑い声の飛び交うドタバタ劇”だ。「月光価千金」「一杯のコーヒーから」など、戦前・戦中の流行歌が、劇中で歌われる音楽劇。愛華さん演じる主人公は、松竹少女歌劇出身の元流行歌手という設定だけに「宝塚で培ったものを生かせそう」と目を輝かせる。「大変な状況の中でも明るさと温かい心を失わなかった主人公の姿は、自分と重なるようにも思える」。昨年夏、がん細胞がなくなる「寛解(かんかい)」に至り、その後の検査結果も良好とあって、「すべての人への感謝の心を込めて演じます。元気な姿を見ていただきたい」と意気込みを語る。
愛華さんは闘病を「今までにない経験として受け止めている」と話す。病気の経過を長く見ていく必要があるだけに、「先のことにとらわれ過ぎることなく、今の仕事を一生懸命にやる」。慎重に言葉を選びながらも、「いつか“一皮むけた”といわれるような演技につながれば…」と言う。
『きらめく星座』
24日(日)まで、天王洲銀河劇場(りんかい線天王洲アイル駅徒歩3分)で。18日(月)は休演。
作:井上ひさし
演出:栗山民
出演:愛華みれ、阿部力、木場勝己ほか。
料金:全席指定S席7350円、A席6300円。
問い合わせ:ホリプロチケットセンターTEL03-3490-4949 |
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