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35年前の主演作「DOOR」が“再公開” 女優・高橋惠子さん |
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映画「DOOR」では丘の上のマンションに夫と子どもとの3人暮らしという設定だったが、高橋さんの自宅には犬や猫のほかカメも一緒に暮らしている。「カメはもう20年になります。名前はパンチョ。呼べば寄ってきますよ」。毎朝、散歩に連れていくビーグル犬の「ノア」は、元気が余ってリードを引っ張ることも。「そんなときは叱り付けています」と笑う |
日本ホラー映画の「原点」をデジタルリマスター
「TATTOO〈刺青〉あり」や「太陽にほえろ!」シリーズなど、映画やテレビドラマ、舞台で活躍してきた女優の高橋惠子さん(68)。デビュー時の芸名(関根恵子)を改名して昨年で40年の節目を迎え、「今年から、また新たな自分に生まれ変わろうと思っています」と意欲を見せる。そんな彼女がストーカーの男に襲われる主婦を演じた35年前の映画「DOOR」(高橋伴明監督)デジタルリマスター版が25日から公開される。「互いが被害者であり加害者であるという切ないドラマに、今の人たちがどう感じるのか聞いてみたい」と、同作が時代を超えて現代の世相にどう響くのか注目している。
日本のホラー映画の「原点」とも位置付けられている「DOOR」。最近も、「夜明けまでバス停で」(2022年)など精力的に問題作を発表している高橋伴明監督の“隠れた傑作”ともいわれている。製作会社(ディレクターズ・カンパニー)の消滅で30年近く行方不明になっていたオリジナルのスーパー16ミリフィルムが発見され、そのネガをもとにレストア(修復)された。
夫でもある監督から、「ほかの女優さんに断られたから」と説得されて、初めてのホラーサスペンス映画に出演したという当時32歳の高橋さん。「撮影が終わって自宅に帰ったとき、2人の子どもたちはいつものように駆け寄ってくれませんでした」
映画「DOOR」でストーカーの男に勇敢に立ち向かう女性を演じた撮影現場の緊張と恐怖が、自宅に帰ってきてからも解けないでいる高橋さんに、子どもたちもただならぬ気配を感じていたという。「この間、久しぶりに映画『DOOR』を見たんですが、主人公の女性は今の自分とまったく別人に見えました」
“虚像”からの脱却
高橋さんは1955年1月、北海道・標茶町(しべちゃちょう)に生まれ、小学6年のとき家族で上京。15歳でデビュー作の映画「高校生ブルース」(70年)や「おさな妻」(同年)に主演したが、両作での「奔放な不良少女」というつくられたイメージに苦しんだ。82年、映画監督の高橋伴明との結婚を機に「高橋惠子」に改名した際、「(デビュー以来の芸名)関根恵子は死んだ」と語った。そのときの心境について、「つくられたイメージから、自分(の地に)に近いところに生まれ変わって女優を始めたいと思ったからです」と話す。改名以来、映画「ふみ子の海」(07年)や舞台「近松心中物語〜それは恋〜」(97〜99年)など、多くの作品で落ち着きのある大人の女性を演じてきた。
コロナ禍で心に変化
「女優は天職」という気持ちで女優の道をひたすら歩んできた高橋さんだが、3年続くコロナ禍で「価値観の変化を感じるようになった」と言う。「これまで女優としていろんな経験を積ませてもらいましたが、『本当は何をしたかったのかな』とか、『何がしたくて生まれてきたのだろう』とも思うようになりました」。おととしから出演している年1回の朗読会で知った宮沢賢治の世界にも影響を受けた。そこで賢治遺作の詩「雨ニモマケズ」を朗読した際、その中にある「ヨクミキキシワカリ」という言葉にハッとしたという。「今まで目の前のことに対処するだけで四季の移り変わりもよく見ていなかった。余裕がないまま、忙しく過ごしてきた」ことに気付いた。「食事も一つ一つ丁寧に味わってみると、食べ物がこれまで以上においしく感じられるようになりました」
かつての改名時に「生まれ変わりを意識した」という高橋さん。「関根恵子から高橋惠子」に生まれ変わって40年がたち、「今年から、また新たに生まれ変わろうと思って新年を迎えました」と声を弾ませる。そして、「自分らしく、魂が喜ぶことを最優先に、新しいことにチャレンジしていきたい」と話す。 |
©エイジェント21/ディレクターズ・カンパニー |
「DOOR」 デジタルリマスター版
監督:高橋伴明、脚本:及川中、高橋伴明、撮影:佐々木原保志(J.S.C.)、出演:高橋惠子、堤大二郎、下元史朗、米津拓人ほか。95分。日本映画。
25日(土)から、新宿K's cinema(ケイズシネマ、Tel.03・3352・2471)で上映。 |
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