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建物賃貸借契約の特約 世田谷区/30歳男性 |
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私は現在、マンションの一室を賃借りしています。契約時、契約書の内容をよく確認することなく署名押印しました。ところが、後でよく読んでみると、「賃貸借終了後、借り主が貸室の所有物を貸し主が指定する期日内に搬出しないときは、貸し主がこれを任意に搬出・保管または処分することができる」との規定がありました。この規定により、貸し主は私の所有物を勝手に運び出したり、処分することはできるのでしょうか。
質問のような合意は、貸室の明け渡し自体を直接規定したものではなく、また、あなたが所有物の搬出を認めたことにより、貸室の明け渡しまで許容したものと解釈することは困難です。したがって、この合意によって、貸室に対する借り主の占有を排除して、貸し主が借り主の事前の承諾を理由に、貸室内の所有物を搬出することは許されないことになります。
この合意による貸室内の物品の搬出・処分は、借り主の貸室に対する占有を侵害しない場合における搬出・処分であると解釈すべきです。例えば、借り主が任意に貸室を明け渡した後に残されていた物品について定めたものと解釈するのが、賃貸借契約全体の趣旨から見て合理性があると思います。
言い換えると、この合意については契約が終了した場合でも、借り主が占有している以上、この占有を侵害して貸し主が一方的に借り主の所有物を持ち出したり、処分することは違法であるというべきでしょう。
もし、このようなことが認められるとするならば、それは自力執行を認めた合意となってしまいます。私人による強制力の行使(自力執行)を許していない現行の法制度の下では認められないものであって、公序良俗に反し、無効な合意といえるでしょう。
これに対し、借り主が任意に貸室を明け渡した後に残留している物品は、借り主の支配から離れた物品の処分に関する問題ですから、所有権放棄によって、他人にその処分を任せることは何ら問題ないといえるでしょう。
あなたが、貸し主と結んだ賃貸借契約の特約条項は、以上のように限定的に解釈する場合は有効です。しかしそうでない場合は無効で、貸し主が行使したときは違法行為となり、損害賠償請求をすることができます。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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