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建物の朽廃と借地権 千葉市/57歳男性 |
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私の父は昭和28年ごろに約30坪の土地を、現在の建物(木造の平屋建て)所有者の父親に貸しました。この建物はかなり老朽化が進んでいて少し傾き加減で、屋根も壁も傷み雨漏りもしているようです。2〜3年前から人は住んでおらず、現在の所有者が物置代わりにしているようです。安い地代の振り込みはありますが、このような場合、建物の朽廃を理由に借地権の消滅は認められないでしょうか。
現在の借地借家法では、建物の朽廃による借地権の消滅は認められておりませんが、平成4年8月以前の契約には旧借地法が適用されます。借地法第2条ただし書きに「建物がこの期間満了前に朽廃したときは、借地権はこれにより消滅す」と規定されています。
そこで問題となるのは、何をもって建物の朽廃といえるかです。朽廃について広辞苑では「くちて役に立たなくなること」、日本語大辞典では「腐ってぼろぼろになること」と記してあります。借地法の立法趣旨から法律的に解釈しますと、朽廃とは「年月の経過によって自然に建物が社会的経済的効用を失う程度に廃退していて建物としての効用を失った状態をさす」といえると思います。ですから、建物が火災や地震などの災害や、取り壊しなどの人為的原因で効用を失っても朽廃とはなりません。
裁判例では、具体的に建物としての利用価値に重点をおいて朽廃の有無が判断されています。例えば、木造建物の柱、桁、屋根などの要部に多少の腐食箇所が見られても、これらの部分に基づく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存在している場合では朽廃が否定されています(昭和33年10月17日最高裁判決)。一般論として朽廃の認定については厳格であるのが裁判所の判断といえるでしょう。
朽廃が認められたケースの要件を確認すると、(1)建築後約60年経過した木造平屋建て居宅であること(2)10年くらい前から瓦がずれ落ち屋根に穴が空いて雨が直接吹き込む状態であること(3)部屋を仕切る壁が崩落し、梁(はり)、柱、壁が腐食している状態であること(4)床板が腐食し床に畳一畳ほどの穴が空いていること(5)2年ほど前から人が居住していないことなどです。裁判所はこれらの事実を認定して、「建物が朽廃状態である」と判断しています。参考にしてください。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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