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保険金受取人の変更 太田区/41歳女性 |
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姉は自らを被保険者、父を保険金受取人とする生命保険契約を結んでおりましたが、死亡する直前に、受取人を私に変更する旨の手紙を送ってきました。この手紙を私が受け取った場合、私が死亡保険金を受け取ることができるでしょうか。そのために何か手続きをする必要があるでしょうか。
保険法が施行された平成22年4月1日より前に保険契約が締結されている場合は、改正前の商法が適用されます。そして原則として受取人を変更することはできないが、別段の意思表示があるときは例外的に変更を認めていました。最高裁判決でも新旧受取人のいずれかに対する意思表示によって効力を生ずるとしています。ただし、保険会社に通知しなければ、受取人の変更を保険会社に対抗することはできないとされています。
ところが、保険法の制定により、保険事故が発生するまでは、保険契約者が保険金受取人を変更できることに改められました(保険法43条1項)。そして、この変更する旨の意思表示は、(契約の相手方である)保険会社に対して行う必要があることになりました(同条2項)。したがって、新旧受取人に対する意思表示では変更の効力は生じないことになります。効力発生時期は、意思表示が保険会社に到達することを条件に発信時にさかのぼって効力を生じます。
次に、遺言によって保険金受取人の変更ができるかについては争いがありました。この点についても保険法で立法的に解決しました。すなわち保険契約者は遺言によって受取人を変更することができると規定しました(保険法第44条1項)。しかし、そのためには遺言書として法定の形式に従って有効であることが必要となります。
今回のケースはお姉さんの手紙ですから、自筆証書遺言となるので、その全文と日付、氏名をお姉さんが直筆で書き、押印されていることが要件となります。この要件のいずれか1つでも欠けていると遺言は無効となり、受取人の変更は認められません。
遺言による変更が認められる場合でも、受取人となった人から保険会社に通知しなければ、保険会社に対抗することはできません(同条2項)。あなたの場合、お姉さんの手紙が自筆証書遺言として有効か否かで結論が異なります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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