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賃借物件の原状回復 世田谷区/30歳女性 |
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私はマンションの一室を借りている者ですが、契約書をよく読んでみると部屋を明け渡すときには、私がふすまの張り替え、畳表の取り替え、クロスの張り替え、ハウスクリーニングの費用を負担する旨の規定となっています。特に私が汚したり、傷をつけたりした場合以外の自然に古くなった場合には入居者には責任がないと聞いていましたが、このような借り主に不利な規定でも効力はあるのでしょうか。
一般的には建物の借り主の原状回復義務について「賃貸借契約が終了した場合には、借り主は本建物を現状に復して明け渡さなければならない」と規定されている場合が多いです。
このような場合は借り主の善良なる管理者としての注意義務違反その他通常の使用といえない使用による損耗を回復する義務があるといわれています。したがって、借り主は通常の利用による自然の損耗については回復義務を負わないことになります。
これに対して、ご相談のケースのように、部屋を明け渡すときにはふすまやクロスの張り替え、畳表の取り替え、ハウスクリーニングの費用などを借り主が負担する旨の規定がある場合は、賃貸借契約当時の現状を確認し、賃貸借契約において具体的に原状回復義務を特定し、貸主・借り主の双方が納得して契約している以上、借り主はその義務を負うこととなります。
裁判例でも平成18年12月23日の大阪高等裁判所の判決で、以下の判断を示しています。《建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課することになるから、賃借人に原状回復義務が認められるためには、少なくとも賃借人が補修費用を負担する範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である》
あなたの場合は契約書の特約条項に、4項目については借り主の費用負担義務として明確に規定され、かつあなたも契約書をよく読んでいなかったとはいえ、契約書に署名押印をしている以上、知らなかったということはなかなか認められないので、原状回復義務を負うことになります。したがって、契約条項は効力があることになります
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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