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危急時の遺言 横浜市/67歳女性 |
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私の父は95歳、がんで入院中です。医師の話ではそう長くはなさそうです。父は小さな声で話すことは可能ですが、字を書くことも歩くこともできません。相続人は母と、私の兄弟姉妹3人の合計4人です。父に遺言書を作ってもらおうと思いますがどのような方式があるでしょうか。
お父さんは字を書くことが困難とのことですから、自筆証書遺言と秘密証書遺言の作成はできないことになります。公正証書遺言は、公証人が作成して遺言者が署名するのですが、署名できない場合でも公証人が署名することができない旨付記すれば署名に代えることができます。また入院中で歩けないときは、公証人に出張してもらうことも可能です。しかし、緊急を要する場合には間に合わない恐れがあるうえに、費用もかかります。
そこで考えられるのが「一般危急時遺言」という方式です。この遺言は遺言者が病気などで死亡が危急に迫っている場合、証人3人以上の立ち会いのうえ、口頭で話して(口授)遺言をすることができる方式です。証人の1人が、遺言者が話した遺言の趣旨を筆記し、これを遺言者とほかの証人に読み聞かせ、遺言者と証人が正確な内容であることを認めて証人全員が署名押印すれば遺言が成立します。遺言者の署名押印は必要ありません。
死亡の危急は客観的に切迫している必要はなく、医師の説明や遺言者の自覚あるいはその状態などから死期が近いと判断された場合であれば良いとされています。
証人3人以上が必要ですが、推定相続人や受遺者それに遺言の内容に利害関係のある人は証人となれません。証人1人が筆記する内容は、遺言者が話した一言一句同一である必要はなく、相続に関する趣旨が記載されていればよいです。また、筆記は遺言者の面前でする必要はなく、証人の直筆であることも要せず、ワープロなどでもよいとされています。証人の署名は、代署は認められませんが、押印は実印でなくともよいです。もちろん作成日の記載は必要です。
この一般危急時遺言は作成後、20日以内に証人の1人または利害関係人が家庭裁判所に請求して、その確認を得ないと効力が生じません。
また遺言者が普通の方式で遺言をすることができるようになった場合は、その時点から6カ月間存命していれば、その効力は生じません。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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