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未納管理費の回収 江東区/65歳男性 |
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私はあるマンションの管理組合の理事長をしています。組合員の中に管理費を2年半も払っていない人がいます。再三催促の書面を郵便受けに入れていますが連絡がありません。
最近、差し押さえを受けたとのうわさがあったので、その部屋の登記簿謄本を取ったところ、裁判所の競売開始決定が載っていました。未納管理費を回収するにはどうしたらよいでしょうか。
回収方法としては、建物区分所有法第7条1項により認められている、未納者の区分所有権および建物に備え付けた動産に対しての「先取特権」を行使する方法があります。
先取特権とは、債務者の財産に対して、債権者がほかの債権者に優先して、自己の債権の弁済を受ける権利のことです。これはマンションなどを維持、管理していくうえで、その管理のために支出した費用は、ほかの一般債権以上に保護すべきという考えから成り立っています。民法306条では共益の費用は債務者の総財産について先取特権を有すると規定しています。また民法336条で一般の先取特権は、不動産については登記しなくても一般債権者に対抗できるとしています。
マンション管理費は規約または集会の決議で決められた区分所有者が負担すべき費用ですから、民法で規定している共益の費用に該当します。
先取特権は、競売を開始した裁判所に対して、配当要求の申し立てをすることで行使できます。その際、マンションの管理組合が一般の先取特権を有することを証明する必要があります。管理規約あるいは組合総会の議事録や未納の明細書、請求書などがあれば十分です。
問題はマンションの持ち分に抵当権などの担保権が登記されている場合です。民法336条のただし書きでも、登記をした第三者には対抗できないと定めています。もちろん、抵当権などを弁済して残りがある場合はそこから配当を受けることは可能です。逆に残りがない場合は配当を受けることはできません。
次に、配当を受けられない場合や受けても未納管理費に不足する場合に、区分所有権を競売で取得した人(競落人)に対して未納管理費の請求ができるかどうかという問題です。区分所有法第8条には先取特権である債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる旨を定めています。
特定承継人とは、区分所有者から売買、贈与などで区分所有権を取得した者をいいます。学説や裁判例では、競売で所有権を取得した競落人も特定承継人に含まれるとしているので、未納管理費を競落人に対して請求することができます。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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