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生前の財産処分 大田区/55歳女性 |
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私は現在95歳の父と、交通事故で車椅子生活となっている85歳の母の介護をしながら生活しています。兄もいましたが、10年程前に病死しました。兄には妻と娘2人がいます。両親の財産としては、7階建てのマンション(建物)がありますが、土地は父が社長をしている会社が所有し、マンションは母名義となっています。会社の株式は、父が相続税対策として(兄が生前中に)60%を兄名義とし、残りの40%を私と母で持っています。父は財産整理のため、マンションを売って現金にして分けたいと言っています。私は両親の介護のために会社勤めを辞めておりますが、私のしてきた介護は金銭的にどのように反映されるのでしょうか。なお、両親はそれぞれ公正証書遺言を作成しています。このような場合財産の分割はどのようになりますか。
ご両親はご健在ですから、現在は相続の問題は発生していませんので、遺言は関係ないことになります。また、父親が「マンションを売却したい」と言ったところで、マンションの敷地は会社が所有し、地上のマンションの所有権は母親であるうえに、父親は会社の株主ではないのですから、いくら社長といっても法的には何の権限も持っておりません。マンションの処分については、亡兄の妻とその娘2人が株の60%を所有しているので、土地の売却については、この人たちの賛成がないとできません。
問題は、マンションを所有している母親と会社との関係です。母親は会社の株を一部持っていますが、過半数は亡兄の相続人が有しているので、母親には決定権はありません。しかし、母親がマンションの敷地の地代を支払っていれば、賃借権を有していて、実質的には土地の60%〜70%の権利を有することになります。もし、地代を払っていなければ、他人の土地を無償で使用していたことになって、使用借権となり、わずかしか評価されないことになります。
最後に、両親の介護のことですが、これは相続による遺産分割の際に、相続財産に対する寄与分として評価されるかどうかの問題です。介護については、特に金銭的負担をしている場合は別として、単に身の回りの世話程度だけだと親子間の情愛によるものとされ、その評価は極めて低いのが一般的です。
弁護士 山下英幸
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