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管理組合書類の閲覧・謄写請求 江東区/70歳男性 |
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私はあるマンションの管理組合の理事長をしています。組合員の一人から、組合が保管している会計書類全部の閲覧と謄写をしたいとの請求がありましたが、管理規約には何も定められておりません。この場合、この請求に応じなければならないのでしょうか。
結論から申し上げますと、会計関係書類の閲覧や謄写は、組合の管理規約に定めがない限り、請求に応ずる必要はありません。
建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という)によると、管理組合規約(以下単に「規約」という)の保管と閲覧については第33条で、また集会の議事録の作成と閲覧については第42条に定めがあって、閲覧を拒んではならないとされています。この2つの書類以外の書類については、区分所有法に規定がありません。したがって、規約と議事録以外の会計関係書類の閲覧・謄写請求に応ずる必要はないことになります。もちろん、閲覧・謄写請求を規約に定めることは可能で、規約に定めた場合、閲覧は当然のこと、謄写も認めなければなりません。
この点について、平成12年11月30日の東京高等裁判所の判決では、規約や議事録以外の書類について、規約に定めのない場合は、閲覧および謄写の請求は認められないとして、請求を棄却しています。その理由の要旨は、「第三者や法人の構成員にこれらを閲覧謄写する権限を認めるか否かは、専ら当該法人の自治に任されているものと解するのが相当である」としています。
また、規約に閲覧のみ定めてある場合について、東京高裁平成23年9月15日の判決では、閲覧請求のみを認め、謄写請求は認めておりません。その理由として、「謄写するに当たっては、謄写作業を要し、謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧とは異なる問題が生じるのであるから、閲覧が許される場合に当然に謄写も許されるということはできないのであり、謄写請求が認められるか否かは、当該規約が謄写請求権を認めているか否かによるものと解される」としております。
要するに、規約と集会議事録以外の書類の閲覧や謄写は、規約に定めがない場合はいずれも認められないということになります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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