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相続放棄できる期間 足立区/51歳女性 |
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不動産業を営んでいた父がおととし亡くなりました。父は遺言書を作成しており、それによると財産は債務を含めて、長男1人に全てを相続させると書いてありました。そのため、(長女である)私は相続に関する手続きは何もしていません。
1年半が経過したとき、ある人から父が連帯保証人となっているから保証債務を支払ってほしいとの催告書を受け取りました。父が亡くなってから3カ月以上過ぎていますので相続放棄は無理でしょうか。
結論から申し上げますと、催告書を受け取った時から3カ月以内なら相続放棄はできると考えます。
民法第915条1項本文の「自己のために相続の開始があったことを知った時」を文字通りに解釈すれば、父が亡くなったことを知っているということは、相続開始があったことを知った時となるから、それから3カ月経過することによって放棄はできないことになります。
しかし、これではあまりにも形式的な解釈となって、相続放棄の機会を失わせることになり、相続人に酷な結果となります。そこで裁判所は以下のような判断をしています。まず相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであること。かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、3カ月という期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時、または通常これを認識して当然だと思われる時から起算するのが相当であるとしています。
あなたの場合も父親の遺言で長男に積極財産はもちろん、消極財産である債務も相続させると定めてあったので、相続については一切関係なく責任を負うことはないと考えたからこそ放棄をしなかったので、このことは相当な理由に当たると考えます。
換言するならば、その時点で債権者から連帯保証債務についての請求があったなら、相続放棄をしていたであろうという事情は相当な理由に該当するのです。
したがって、債務の催告の通知を受け取ってその内容確認をした時から3カ月以内なら相続放棄ができることになります。
弁護士 山下英幸
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