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貸室の転貸借 板橋区/61歳男性 |
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私は、ビルの一室を事務所として借りている甲から、ビルの所有者乙の承諾を得て「また借り」しています。ところが、賃借人の甲が不況で乙に対する賃料の支払いを怠っていたようで、乙から賃料不払いを理由に契約を解除されたとのことです。私は、約束通り甲に賃料は払っておりますが、乙から建物の明け渡し請求があった場合には、応じなければならないのでしょうか。甲を除いて乙と直接賃貸借契約を結ぶことは可能ですか。また、甲の不払い賃料について私に支払い義務はありますか。
ビルの所有者(家主)乙の甲に対する契約解除の理由が、賃料不払いである場合は、あなたへのまた貸し(転貸)について家主の承諾があるときでも、明け渡し請求に対抗することができないため、乙の明け渡し請求には応じなければなりません。その理由は、あなたに事務所を貸した甲の転貸権は、家主乙との間の賃貸借契約による賃借権が基となっているため、乙の契約解除によってその基の権利を失ってしまうからです。
契約解除が、甲・乙間での合意による場合は、あなたへの転貸を乙は承諾しているのですから、明け渡しを求めることができないとするのが判例です。
あなたが、乙と直接賃貸借契約を結ぶことは、何ら問題はありません。あなたに事務所をまた貸ししていた甲は、乙の契約解除によって、この事務所に対する権利関係は無くなるからです。ただし、事務所内に甲所有の物品などがあるときは、甲との間で解決する必要はあるでしょう。
次に賃料などの支払いの点ですが、家主乙は、あなたが事務所を明け渡すまでは甲に対して契約解除までは賃料として、解除後は損害金として請求権を有することになります。そして甲はあなたに対し、あなたが明け渡すまで賃料および損害金を請求することができます。問題は、甲があなたから賃料の支払いを受けたにもかかわらず、家主乙に支払いを怠っていた不払い賃料です。
乙はあなたとは契約関係にないので、あなたに請求することは法律上できません。しかし、あなたが直接に契約を求めようとすれば、乙は不払い賃料の清算を要求し、それに応じたら契約しましょうと言うかもしれません。事務所の継続使用を望むあなたがこれに応じた場合は二重払いとなるので、その分は甲に返還請求することになります。また、乙は甲との契約解除後は、あなたに対しても不法占拠者として損害賠償の請求ができます。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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