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遺言執行者の解任 大田区/51歳女性 |
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父が昨年亡くなり、自筆証書遺言書に父の知人が遺言執行者として記載してありました。その遺言執行者は相続人との連絡が少なく、業務の途中で相続人の承諾なく保管中の相続財産から報酬を受け取っておりました。このような場合に遺言執行者を解任することはできるのでしょうか。
遺言執行者が報酬を受け取ることができる時期について、民法1018条2項にある通り、民法648条2項を準用して、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する」と規定しています。
例えば、遺言執行者の報酬は不動産の売却が完了した時とか、あるいは、銀行預金が全て解約された時などと、遺言書に支払い時期が記載されているような場合を除いては、遺言執行の事務が全て終わった後でなければ請求できないことになります。請求できない以上、受領することは当然できないことになります。
この点について、参考となる判決があります。遺言書で遺言執行者の報酬を遺産総額の1.5%と定められていたが、遺言執行者が相続人の承諾を得ることなく、業務の途中で、遺言書記載の範囲内で報酬を受領したというケースです。この事案について裁判所は次のように判決しております。「遺言執行者の報酬は、事務を終了した後でなければこれを請求することができないのが原則であるから、途中で取得するためには、相続人等の承諾を得ることを要すると解される」としています。
さらに判決は、「報酬受領について相続人等に対し、事前の説明もせず、承諾を得ることもせずに報酬を自ら決定し、これを取得した遺言執行者については、遺言の執行に尽力したことを考慮したとしても、解任事由に当たると言わざるを得ない」と判断しています。
このように、遺言書で定めた範囲内の報酬額であったとしても、遺言執行者が遺言執行業務の途中で相続人の承諾なく報酬を受領する行為は違法となります。
遺言執行者が違法な行為をした以上、解任することができると考えます。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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