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名義預金の相続 三鷹市/48歳女性 |
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不動産の仲介や管理業をしていた父が、昨年亡くなりました。相続人は母と私と弟の3人です。相続財産は自宅と銀行の預貯金ですが、問題は事務所の金庫の中に弟名義の定期預金証書、額面各100万円が12通、合計1200万円があったことです。弟は、「この預金は自分名義のものだから俺のものだ」と言って譲りません。この預金は相続財産とならないのでしょうか。
預貯金の帰属については、一次的にはその金が誰のものであったかということで決まります。ご相談の場合、お父さんが不動産の仲介や管理の報酬として受け取ったものを、弟さんの名義を使って定期預金としていたのであれば、これはいわゆる「名義預金」あるいは「借名口座」となり、父親のものとして相続財産となります。
これに対して、弟さんが「その定期預金は自分の金を定期にして、その証書を父に預けて保管してもらっていた」と主張するなら、弟さんは自分の金であることを立証しなければなりません。あるいは、父親の金であったが、父から贈与を受けて自分名義で預金していたと主張するかもしれません。
しかし、一般的には預金の資産を被相続人が出し、証書やその証書に使われている印鑑を被相続人が保管しているような場合には、相続人が父親から贈与を受け、引き渡しも受けた事実を立証しない限り、その預金は被相続人に帰属するものとして相続財産となります。
税務上も、弟さんの預金として相続税の申告をした場合、税務調査において、弟さん名義の定期預金は「名義預金」あるいは「借名口座」として弟さんの預金であることは否認され、相続財産とされます。
もし、この定期預金について、お父さんと弟さんの間で贈与契約があって、仮に毎年100万円を12年間贈与していたことが証明できるならば、年100万円なら贈与税は課税されないので、定期預金は全額弟さんの所有となります。
ただし、相続人への贈与は何年も前のものであっても、特別受益として計算されるので、定期預金1200万円は相続財産に加算され、弟さんの法定相続分(4分の1)から1200万円を差し引いた金額が弟さんの具体的な相続分となります。
弁護士 山下英幸
TEL:03-3508-0581 |
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